【海外FX】MAMみん事件における事案の概要と法的問題(違法性)の検討

第0 はじめに 

2020年後半に、あるFXトレーダーがMAMを利用して、集客した上で、トレーダー(参加者)に爆損を被らせたという事件(通称:MAMみん事件)が発生した。
当時もの凄く盛り上がったものの、当該FXトレーダーがSNSから形式的に退場することで、事件はなぁなぁのままで闇に葬られた。
事件の真相は当事者及び参加者のみ知るところであり、別に当該FXトレーダーを突っつくつもりはないが、今後FXを始める人(及びサロンを開催する予定の人)のために、注意喚起の意味を込めて、当該事件の法的問題点、換言すれば、違法性について検討したいと思う。 

この記事のまとめ
(1)デモトレードを用いて爆勝トレーダーを装い、自らが親トレーダーになるMAMに勧誘し、入金させる行為は、刑法上の詐欺罪に該当する。
(2)MAMの参加条件として、アフィリエイトリンクを踏ませて、海外FXのブローカーに口座開設させる行為には、金融商品仲介業の登録が必要であり、違法である。
(3)MAMの親トレーダーとして、子トレーダーの分も代わってトレードする行為には、投資運用業が必要であり、違法である。
*厳密には、金融商品仲介業及び投資運用業の登録を適式に行っていれば、違法ではないが、個人で取得できるライセンスではないので、登録は行っていなかったと考えている。仮に自らが保有する法人で登録したとしても、金融商品仲介業及び投資運用業者に対する金融商品取引法上の諸々の行為規制は遵守していなかったので、いずれにしても違法だろう。 

第1 事実関係 

1 SVO事件

あるFXトレーダー(仮称:次郎)は、海外FXブローカーであるSVO社で勝ち続けていた。SVO社にはコピートレードというシステムがあった。コピートレードは、他のアカウント開設者(参加者)に自分のトレードがミラーでトレードされ、利益を出した場合には、利益の一部が報酬として次郎に入ってくる仕組みである。損を出した場合には、当然次郎には報酬が入らない。一見合理的な仕組みであるが、利益が出てもその70%が得られないのに対して、損をしたら100%自分持ちなので、プロフィットファクターは0.7なのである(仮に1勝1敗の取引を繰り返した場合)。

勝ち続けている限り、この問題は顕在化しないが、益がでているポジションのみを決済し、報酬を貰い続け、限界が来たら一気に損含みのポジションを決済するという(次郎は報酬でカバーされるが、参加者は爆損を被る)事態を招きやすいのである。

そして、案の定、次郎は参加者に爆損を被らせて、Twitterアカウント及び5chが炎上するに至った。 

2 自作自演

時間が経って、炎上が沈静化後、次郎は新しい勧誘スキームの構築に着手。具体的には、次郎の妻の花子(仮称)のアカウントを作成し、デモトレードの画面を用いて、爆勝ちしているトレーダーを装う。次郎は夫婦関係を隠して、花子のツイートを引用リツイート等して、称賛するというやりかたである花子のアカウントも裏では次郎が操っているから要は自作自演なわけである。 

なお、デモトレードを使えば、爆勝ちしているトレーダーを装うのは簡単なのであり、両建して一方だけ決済をすれば、履歴上勝ちトレードしか載ってこないのである。花子(中身は次郎)は、この手法を用いて、5000万円の利益を出した風に装い、「ハーフ億トレ」「オールブルー」という言葉を用いて、フォロワーを煽った。 

3 MAMへの勧誘

一部の情弱トレーダーは、上記自作自演を信じてしまった。花子はMAMサロンを開設し、その参加条件として、花子のアフィリエイトリンクを経て指定した海外FXブローカーでの口座開設を課した。その際の説明として、大要①ブローカーはトレーダーが増えて喜ぶ(利益が上がり、喜ぶ)、②花子はサロン運営費を賄える、③参加者は金を儲けることができる、として、WINWINの関係を主張していた。 

この説明は一見もっともらしく見えるかもしれないが、実際には、サロン運営費など発生はしないし、単に花子の私腹を肥やすというのが実態である。また、B bookのブローカー(要は取引相手が市場ではなく、ブローカーであり、呑み行為を行っているブローカー。ちなみに日本のFX業者はほぼBbookである。)を用いる以上は①と③は両立しないのである。 

情弱トレーダーは、この説明を受けてか、花子を親トレーダーとするMAMグループに、子トレーダーとして参加することになった。もちろん花子(実際は次郎のものかもしれない)のアフィエイトリンクを踏んだ上で開設した口座を用いて。 

4 そして、爆損へ・・・

例によってMAMトレードが開始した当初は、含み益のあるポジションから決済していった。それにより、見かけ上は常に勝っているように見え、残高が増えていった。当然ながら、それにより花子は報酬を積み上げていった。一方で、含み損のポジションはキープしたまま、AUDUSDのショートポジションをナンピンしていった。そして、そのままトレンドが転換しなかったため、20000pipsを超える含み損となった。20000pipは0.1LOT(1万通貨)で、200万円の損を被るレベルのものであり、当然ながら、口座に残高が少なかった子トレーダーはロスカットとなっていった

子トレーダーは、含み損が大きくなっていっていっているにもかかわらず、損切を行わなかった花子に対して、不満を有していた。それが爆発(現実化)することになった(が、当然ながら、MAMの報酬体系や取引成績を一見良く見せるためにこのようなトレードになりがちなのはやむを得ないところであり、それに思い至らず、参加した方も悪いといえば、悪い気がする。)。また、MAMの場合、出金については、花子の承諾が必要であるところ、花子が承諾を不当に留保したため、損が拡大したという子トレーダーもいたようである。このような経緯もあり、花子主催のDiscordで参加者の不満が爆発し、Twitterで暴露されるに至った。なお、花子も取引では損を被っただろうが、MAM開始直後は含み益ポジションを決済していっていたようなので、この分の報酬を得ているはずである。そのため、子トレーダーは爆損を被りながら、花子はそれを養分として爆益を得た可能性がある。 

5 炎上

その後、Twitter(及び5ch)では次郎及び花子(実質的には次郎一人)叩きがあり、次郎及び花子のアカウントは事実上停止状態に至った。しかしながら、騙されたままの情弱トレーダーを鴨とするDiscordグループは裏では存続していたこと、また、次郎が裏アカを使って、次郎及び花子を糾弾するTwitterアカウントを攻撃したこと(当該アカウントから、本人しか持ちえないスクショが投稿されていたため、本人と特定された。なお、当該アカウントは誹謗中傷しか行っていなかったため、利用停止となった。)、次郎を糾弾しようとしたガガオくんとの法廷闘争を匂わせたことも相俟って、思いのほか、沈静化まで時間がかかった。 

6 通報

一連の行為の違法性(後述)に関して、Twitter及び5chの有志は主に金融庁に通報を行った。中には本人の本名や住所を用いて通報を行った者もいた。もっとも、金融庁の回答は、海外FX及びMAMは違法であるものの、現在の証拠状況や違法性の度合いに照らして、摘発するに値する程度には至っていないという判断を行ったというものである。そして、金融庁は、被害者に対して消費庁への相談を薦めた。 

また、消費者庁の回答としては、詐欺案件に該当し得るものの、立件するまでには至っていないというものである(そのように判断した理由を私は確認できていないが、被害規模が小さかったことや、提供された証拠の少なさ・弱さに原因があったのではないかと推察している。)。 

7 本件の教訓

こうして、この件は黙殺された形で終わるという後味の悪いものとなったわけであるが、この件から得られた教訓としては、 

①海外FX・MAMは違法であるが、被害規模が大きくないと逮捕されるには至らない (個人的には監督行政的な観点から、今回のケースは摘発すべきケースだったのではないかと考えている。)

②デモトレードを用いれば、勝ちトレーダーを装うことは容易 

③MAMに参加する場合、たいていのケースでは、親トレーダーの養分となる 

(アフィリエイトリンクを踏んで口座開設することが入会条件となっているサロンは大抵このような構造になっているのである。私は悲しいかな、騙された?経験あり。詳しくは以下の記事をご参照)

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第2 法的分析 

1 詐欺罪

デモトレードを用いて爆勝トレーダーを装って、MAMに勧誘し、入金させる行為は、刑法上の詐欺に該当する。 

詐欺罪が成立するためには、ざっくり言って、①欺罔行為と、②欺罔行為に基づいて財物を交付させることが必要である。デモトレードを用いて勝ちトレーダーを装い、MAMに勧誘する行為は、情弱トレーダーの錯誤を惹起して、MAMに用いる海外ブローカーの口座に入金(交付)させる行為であり、詐欺罪を構成するだろう。 

なお、当該海外ブローカーの口座は、当該情弱トレーダーのものであるから、②の要件を満たさないのではないか、という議論はあり得る。もっとも、詐欺罪の財物の交付については、欺罔行為が無ければ、当該財物を交付していなかったという関係があれば足りると解されており、実際の損害の有無は問わない理解でいる。また、MAMの場合には、自由に入出金ができなくなることから、純粋に自分の口座と同様と評価することはできないものと思う。したがって、この点は、詐欺罪の成立を否定するものではない。 

2 金融商品仲介業

MAMの参加条件として、アフィリエイトリンクを踏まえせて、口座開設させる行為には、金融商品仲介業の登録が必要であり、かかる登録がなく行うことは、違法である。 

金融商品取引法第2条第8項第4号は、業として行う「店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理」を金融商品取引業(=金融商品仲介業)に該当すると規定する。金融商品仲介業に該当する場合、その登録(ライセンス取得)が必要となる。

海外FXブロカーのところでFX取引を促す行為は「店頭出デリバティブ取引」の媒介に該当し得ると考えられており、典型的にはアフィリエイトリンクを用いて集客すると共に、口座開設サポートを行っている場合や、口座開設の際にキャッシュバックを行う行為はこれに該当し得ると言われている(関東財務局もその旨指摘している。)。

MAMへの参加の条件として、アフィリエイトリンクを踏まえせて、海外FXブローカーにおいて口座を開設させる行為は、海外FXブロカーのところでFX取引を促す行為であり、「店頭出デリバティブ取引」の媒介に該当すると考えて良いだろう。

したがって、ライセンス取得なくこれを行った花子の行為は、金融商品取引法に違反している。

3 投資運用業

MAMの親トレーダーとして、子トレーダーの分も代わってトレードする行為には、投資運用業の登録が必要であり、かかる登録がなく行うことは、違法である。 

この点に関する条文操作は若干複雑であるため、詳しくは、以下の記事を参照していただきたいが、MAMは、子トレーダーの口座内の金員について、親トレーダーが子トレーダーに代わって運用することになるため、金融商品取引法第2条第8項第12号ロが規定する投資運用業に該当すると考えられる。

そして、投資運用業に該当する場合、その登録(ライセンス取得)が必要となる。

したがって、ライセンス取得なくこれを行った花子の行為は、金融商品取引法に違反している。

(弁護士が検証)MAM(マム)・PAMM(パム)って何?違法or適法?詐欺に会わない?MAM口座・PAMM口座の法律問題・違法性について検討してみた。

4 おまけ

上述のとおり、次郎が花子のアカウントを勝手に作成していて、上記各行為を行っていたわけであるが、仮に花子が次郎のかかる行為を知りながらも、あえて放置していた場合には、花子には共犯関係、具体的には幇助犯が成立することになろう。

(2021年5月2日)花子は顔出しでFXに関するYouTubeやインスタを運営していた。かかる事実関係からすると、花子と次郎の間には共同正犯が成立する可能性が高いものと思われる。なお、ヒアリングによれば、花子にはFXに関する知識はなく、自分では取引も行っていなかったようである。YouTubeでは太郎が作った台本を読んでいただけだろう。

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