【海外FX】弁護士詐称事件における事案の概要と法的問題(違法性)の検討

第0 はじめに

2022年中頃に、あるFXトレーダーが弁護士を詐称し、情報商材屋を叩いて正義を見せつけることにより、集客を行い、MAMへの参加や自らのNOTEの購入を促すという事件が発生した。
当該トレーダーはTwitter引退を宣言し、沈静化を図ったが、Twitterのアカウント抹消の熟考期間の1ヶ月経過前に「開き直るとすげー楽」と開き直って戻ってきた

私は特に被害を受けたわけではなく、別に当該FXトレーダーを突っつくつもりはないが、海外FXに関する法的観点からとても参考になる事案なので、注意喚起の意味を込めて、当該事件の法的問題点、換言すれば、違法性について検討したいと思う。

この記事のまとめ
(1)弁護士を詐称した行為について弁護士違反が成立する
(2)司法修正生を思わせた行為については軽犯罪法違反は成立しないと思われる
(3)NOTE販売に関連して、氏名等を開示しなかった行為については特定商取引法違反が成立する
(4)弁護士を詐称し、また、金融庁の監視下にあるとの虚偽の事実を用いて、情報商材屋の業務を辞めさせた行為には偽計業務妨害罪が成立する
(5)ブローカーの立ち上げ行為、MAMのマスタートレーダーを行った行為には金融商品取引法違反が成立する
(6)詐欺罪の成立を基礎づける事実関係は確認できていない

第1 事実関係

事実関係についてはツイートや皆様のDMを基に記載しております。過不足あれば、DMをお願いいたします。事実関係に誤りがあるのであれば、速やかに修正する所存です。

1 弁護士の詐称

あるFXトレーダー(仮称:ジンさん)は、一般社団法人日本FX教育機構に所属するFXトレーダーである。ジンさんは同機構に所属しつつ、FXの知識や相場分析についての布教活動を行っていた。

ジンさんは、
2021年10月1日に「俺は必死に勉強して弁護士になったよ(本当です。)
2022年5月16日に「だから僕みたいな無償でやる法律家がいるんです。皆さん弁護士費用で泣き寝入りで違法行為をする人が好き勝手にやっていたんです。それに終止符を打つきっかけになりたいんです。過去に何度もやっています。結果も出してます。
2022年5月29日に「自分自身の防御のために弁護士の資格をとりました。詐欺師の方々ともたくさんお話しましたが皆さん自分から離れていきました。
2022年6月12日に「弁護士としてお伝えします。鼻で笑われて恥をかくだけだから家でおとなしくしていた方がいいです。
とツイートし、弁護士を名乗り、ジンさんが詐欺師とみなした情報商材屋(オンラインサロンやエントリー配信グループへ勧誘する者を含む。以下同じ。)の撲滅運動を行っていた

しかしながら、2022年6月中旬頃、法律知識の欠如や、弁護士会以外の健康保険に加入していることなどから、弁護士資格を有していないことが発覚し、ジンさんも弁護士資格を有していないことを認めた

2 司法修習生の詐称

弁護士資格を有していないことを咎められたジンさんは「あと少し待ってください、まもなく弁護士になります」という旨のツイートを行った。
かかるツイートについては、現在司法修習生であるという趣旨なのか、司法試験合格者であるという趣旨なのか、それとも司法試験受験生であるという趣旨なのかは明確ではない

3 情報商材屋への攻撃

ジンさんは弁護士と名乗った上、「私のアカウントは金融庁の監督にあります。」(=私がツイートすることにより、金融庁の標的にできますよの意)と告げ、情報商材屋を攻撃し、情報商材屋の宣伝・勧誘活動を止めさせていた。

4 NOTEの有料販売

ジンさんは有料のNOTEを販売していた。某氏がNOTE社を介して、ジンさんの氏名・住所等の開示請求を行ったが、ジンさんは開示を拒否した
以降、NOTE社もジンさんに連絡を取りはからうことを拒否した。

5 ブローカーの立ち上げ及びMAMの運用

ジンさんは自らBlue Dragonというブローカーを立ち上げたことをツイートし、そこでMAMのマスタートレーダーとなる旨を宣言。
なお、ジンさんは「投資判断者」の許可を有する旨、主張していたが、金融商品取引法上、「投資判断者」という概念は存在しないし、「許可」というものも存在しない。文字どおり、「投資判断」をしているのであれば、「投資運用業」の「登録」が必要であるが、ジンさんは、「投資助言業」の「登録」を行っている一般社団法人日本FX教育機構に所属するに過ぎない。

6 サロンの開催及びEAの配布

アフィリンクを踏むことを条件としたサロン(エントリー配信グループ)を主催
また、EAを一般配布を行っていた。

7 詐欺行為

ツイッター上では、ジンさんが詐欺行為を行ったと主張するアカウントも散見される。もっとも、具体的に何が詐欺行為であったのか、その詳細を述べているツイートは見つけることができていない

第2 法的分析

1 弁護士法第74条違反

弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。」(弁護士法第74条)

ジンさんは、弁護士でないにも関わらず、弁護士であることを自称していたことは明らかであるから、弁護士法第74条違反が成立する
なお、弁護士法第74条違反の刑罰は、100万円以下の罰金(弁護士法第77条の2)。

2 弁護士法第72条違反

ジンさんは、詐欺被害者に代わって、情報商材屋と戦っていたようであるが、いわゆる非弁行為が弁護士法違反を構成するのは、「報酬を得る目的で」で法律事務を取り扱った場合であり、ジンさんのツイートどおり、無償で行ったものであるのであれば、弁護士法第72条違反は成立しない

なお、被害者の権利を譲り受けて、それを行使するという態様であったならば、無報酬でも、弁護士法第73条違反が成立するが、このような事実関係は確認できていない。

3 軽犯罪法第1条第15号違反

「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し・・・た者」は、拘留又は科料に処する(軽犯罪法第1条第15号)。

仮にジンさんが自らを「司法修習生」であると名乗ったのであれば、軽犯罪法違反が成立する可能性がある(正直、「司法修習生」は裁判所法にて定められている地位であるが、「法令により定められた称号」に該当するのか判然としない。)。

もっとも、ジンさんは「あと少し待ってください、まもなく弁護士になります」という旨のツイートを行ったに過ぎず、現在司法修習生であるという趣旨なのか、司法試験合格者であるという趣旨なのか、司法試験受験生であるのか、これから勉強を始めるという趣旨なのかは明確ではなく、司法試験合格者や司法試験受験生は法令で定められた称号ではない。
そのため、軽犯罪法第1条第15号違反は成立しないように思われる

4 偽計業務妨害罪(刑法第233条)、強要罪(刑法第223条)

「自分は弁護士である」、「金融庁に監視下にある(バックに金融庁がいる)」という偽計を用いて、情報商材屋の業務を妨害していることから、偽計業務妨害罪(刑法第233条)が成立するものと思われる。
偽計業務妨害罪の刑罰は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金である。

なお、情報商材屋の業務が違法である場合には、それが刑法上保護に値するのかという議論はあり得るところではある。
また、上記偽計は、言われた者を畏怖させるものであるが、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知」するものと評価できるかは微妙である。そのため、強要罪が成立するかは判然としない。

5 特定商取引法違反

インターネット上で情報商材を販売する場合、特定商取引法に基づく氏名・住所・電話番号を表示する義務がある
NOTE社などのプラットフォームを利用する場合、当該プラットフォームが、販売者に適切に連絡を取り次ぐことを条件に、当該プラットフォームの住所・電話番号を表示することで代替できる。
もっとも、利用者から氏名について開示の請求がなされた場合には、氏名を開示しなければならない

本件では、NOTE社を介して氏名開示請求がなされたものの、ジンさんはこれを拒否し、以降NOTE社はジンさんに連絡を取り次いでいない以上、上記条件を満たさず、ジンさんは特定商取引法に基づく氏名・住所・電話番号を表示する義務に違反している。

なお、かかる表示義務違反自体には直ちに罰則が適用されるものではなく、行政からの是務命令等を無視した場合に罰則が課される。
したがって、ジンさんには特定商取引法違反が成立するものの、行政からの是務命令等を無視したという事情がないのであれば、罰則は適用されない

特定商取引法に基づく氏名・住所・電話番号を表示する義務の詳細については、以下の記事をご参照。

(法律)SNS等で情報商材やEAを販売する場合の氏名・住所・電話番号の表示義務

6 金融商品取引法違反

まず、海外でブローカーを立ち上げ、日本居住者を対象に運営する行為には第一種金融商品取引業登録を要する
次に、MAMのマスタートレーダーを行う行為には、投資助言業登録では足りず、投資運用業登録を要する

アフィリンクを踏ませた上でのエントリー配信を行うオンラインサロンの開催について、投資助言業登録が必要かについては、議論がある。
投資助言業は、投資運用業と異なり、助言の対価として報酬を得ることが要件となるが、アフィリンクを踏ませることで得られる報酬は、ブローカーからの広告報酬であり、助言との対価性は形式的にはない。実質的には、アフィリンクを踏んだ人から支払われる助言対価と言えなくもないが、、、助言業を必要とする主張は難しいのではなかろうか。

EAの配布が①ジンさん名義で、②有料で行われ、③アフターサポートが付いていたたのであれば、投資助言業登録が必要となる。もっとも、これらについての事実関係は確認できていない。

したがって、ジンさん自身のツイートに記載の事実が真実とするのであれば、ジンさんには第一種金融商品取引業登録及び投資運用業登録が必要となり、無登録である場合には、金商法違反であり、その刑罰は五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金である(金商法第197条の2第10号の4)。

なお、一般社団法人日本FX教育機構はフランチャイズの形式を用いて、投資助言業登録を貸し出すようなことを行っていたようであるが、登録を貸すことなどできず、フランチャイジー(借りた人)が無登録で投資助言業に該当する行為を行っていたのであれば、フランチャイジーに金商法違反が成立するであろうし、一般社団法人日本FX教育機構も業務改善命令の対象となるだろうし、金商法違反の幇助犯も成立するのではないかと思われる。

また、ジンさんは、海外FXの損益のスクショをツイッターに載せる行為を違法(金商法違反?)と述べていたようであるが、その根拠は不明である。

ライセンス関係の法律関係については以下の記事をご参照。

(弁護士が検証)海外FXに関する法律問題-コンサル、エントリー配信、EAの販売、ソーシャルトレードの違法性の問題etc-[工事中]

7 詐欺罪(刑法第246条)

ジンさんが、自ら弁護士であるとの欺罔行為を用いて、NOTEを買わせたり、情報教材を買わせていたのであれば、詐欺罪が成立する可能性はあるが、これらの事実関係については確認できていない。

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