最近、ヤフオクでとある教材(普通に買うと8万円くらい)を購入しようとして、検索かけてみたら、当該教材が数百円で売られているのを見つけた。
クリックして、中身を見てみると、
「当商品は情報販売です。
当該商品につきましては、当方がアップロードしたものではございません。
商品・掲載サイト等に関するお問い合わせにはお答えできませんので、ご了承ください。
あくまでも『無料で手に入れる方法』の情報提供するという形となります。
ヤフオクの規約、著作権等にも違反しておりませんので、安心してご購入してください。」
と商品説明が行われていた。
ググって調べてみたら、これはどうやら、落札した人に当該商品が(違法に)アップデートされているURLを教えてくれるらしく、そのURLの情報提供料として、落札金をもらっているという仕組みのようである。
うん、直感的にこれは著作権を侵害している気がする。
仮に本当に「当方がアップロードしたものではございません。」としても。
そこで、この場合において、出品した人と落札した人の法的関係(違法性)について検証してみた。
この記事のまとめ 1 単にURLを貼るだけだと著作権侵害ではない。 2 以下の場合には、著作権侵害の幇助になり、不法行為が成立する可能性がある。 ・他サイトの動画が違法アップロードされたものと知りながらリンクを貼った場合 ・著作権者から抗議を受けた後(違法サイトであることを認識した時点)もリンクを削除せず貼り続けた場合 3 出品者は当然クロ 4 落札者はシロ |
第1 出品者の法的責任
この問題は、実は、違法にアップデートされている動画等にリンクを貼ると著作権侵害になるのか、という問題と同じである。
そこでは、①まず、(リンク先のホームページ等が一般公開されている場合を含み)リンクを貼る行為自体の適法性が問題となり、次に②違法にアップデートされている動画等(今回私が出会ったケースでは教材のPDFファイル)のリンクを貼る行為の適法性が問題となる。
1 ①リンクを貼る行為自体の適法性
この点については、経済産業省は、ネットショッピングやデジタルコンテンツをめぐる法的問題について「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」にて、この問題点を整理しており、
インターネット上において、会員等に限定することなく、無償で公開した情報を第三者が利 用することは、著作権等の権利の侵害にならない限り、原則、自由であるが、リンク先の情報 をⅰ)不正に自らの利益を図る目的により利用した場合、又はⅱ)リンク先に損害を加える目的により利用した場合など特段の事情のある場合に、不法行為責任が問われる可能性がある。
としている。
確かにリンクを貼ったとしても、リンク先の著作物を公衆送信(著作権法23条1項)や複製(同法21条)しているわけではないので、かかる結論に異論はない。
なお、「公衆送信」とは、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信・・・を行うことをいう。」と定義されている(著作権法2条第7の2号)。リンク貼るだけだと、リンク元サイト(URLを貼ったサイト)から、リンク先サイトの著作物を「直接」受信はされないから、「公衆送信」には該当しないということである。
2 ②違法にアップデートされている動画等のリンクを貼る行為
では、違法にアップデートされている動画等のリンクを貼る行為はどうだろうか。これは違法にしないと、色々問題があると思う。
この点に関して、参考となる裁判例がある。
俗にロケットニュース24事件と呼ばれる事件(大阪地判平成25年6月20日・判例時報2218号112頁)である。なお、公刊物で把握出来る限り、控訴はなされなかったようである。
サイト「ロケットニュース24」がニコニコ動画に違法にアップされていた動画にリンクを貼った件につき、大阪地裁はリンクを張る行為は公衆送信権侵害とはならないことを示したうえで、例外的に不法行為(著作権侵害の幇助)になりうるケースについて以下のとおり述べた(緑字部分)。
ところで、原告の主張は、被告の行為が「送信可能化」そのものに当たらないとしても、「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画にリンクを貼ることで、公衆送信権侵害の幇助による不法行為が成立する旨の主張と見る余地もある。
しかし、「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は、著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが、その内容や体裁上明らかではない著作物であり、少なくとも、このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。
そして、被告は、前記判断の基礎となる事実記載のとおり、本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能としたことにつき、原告から抗議を受けた時点、すなわち、「ニコニコ動画」への本件動画のアップロードが著作権者である原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。
このような事情に照らせば、被告が本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは、原告の著作権を侵害するものとはいえないし、第三者による著作権侵害につき、これを違法に幇助したものでもなく、故意又は過失があったともいえないから、不法行為は成立しない。
うん、極めて合理的な判決だと思う。
この判決が言っていることを簡単にまとめると、、、
違法にアップロードされた動画にリンクを貼ったとしても、
・著作権者の許諾なしにアップされていることが、内容・体裁上、明らかではない場合
・違法なサイトであることを認識し得た時点で直ちにリンクを削除した場合
であれば不法行為は成立しないということである。
これはつまり、
・他サイトの動画が違法アップロードされたものと知りながらリンクを貼った場合
・著作権者から抗議を受けた後(違法サイトであることを認識した時点)もリンクを削除せず貼り続けた場合
であれば、公衆送信権侵害の幇助として不法行為が成立する可能性があるということである。
(裁判例は、一個目の点に関して、「少なくとも・・・直ちに違法になるとは言い難い」と言っており、他サイトの動画が違法アップロードされたものと知りながらリンクを貼った場合だけで直ちに不法行為が成立するか否かは判断を留保していることが見て取れるが、いずれにしても、不法行為が成立する”可能性”は残るのであろう。)
3 上記を踏まえ、出品者の責任
以上を前提に、本件について検討してみる。
高額で売られている教材を、教材作成者が、インターネットに無償で自らアップデートすることはおよそ考えられない。
したがって、私が買おうとした教材は、違法にアップデートされているのだろう。
よって、そのURLを出品者が売る行為は、公衆送信権侵害の幇助として不法行為が成立する可能性がある。
なお、ヤフオクでURLを売る場合、メールか、あるいは、取引ナビ(出品者と落札者がやりとりしているヤフオク上の場所)でURLのやりとりをしており、一般公開されているホームページなどにURLを貼り付ける場合と異なる部分はあるが、公衆送信権侵害の幇助として不法行為が成立する可能性があるという点は異ならず、強いていえば、不法行為に基づく損害賠償の金額に差がでてくるのではなかろうか。
私の結論としては、本件における出品者はクロである。
(日本語がたどたどしいので、正直、出品者は日本人じゃないと思うんだよね・・・小声)
なお、著作権侵害は犯罪であり、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされている(著作権法119条1項)。そして、その幇助犯は「従犯」とされ(刑法62条1項)、「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する」(刑法63条)とされている。従って、著作権侵害の幇助をした者は、上記の刑罰を上限に刑罰が科されるということである。
第2 落札者の法的責任
それでは落札者は法的責任を問われるのだろうか。
落札者がそれを周りの友人などに拡散する場合には、当然ながら、著作権侵害が成立するであろう。
あくまでも教材なので、自分だけが使う場合にどうなるかが問題となる。
この点に関し、少し時間を遡るが、、、WinnyやWinMX(ファイル共有ソフト)が流行った頃、違法に音楽や映画が共有され、著作権の保護が問題となった。
その後、2010年1月1日に施行された著作権法の改正により、違法なインターネット配信による音楽・映像を違法と知りながらダウンロード(複製)することが、私的使用目的でも権利侵害(著作権法違反)となった。
さて、この違法となる行為を明記している条文(著作権法30条1項3号)は以下のとおり、規定している。
著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合
そう、複製の態様が「録音又は録画」とされているのである。
そして、「録音」と「録画」はそれぞれ著作権法上、以下のとおり定義されている。
「録音」 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう(著作権法2条13号)。
「録画」 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう(著作権法2条14号)。
そうすると、教材(PDF)のダウンロードは「録音」にも「録画」には、該当しなそうである。
したがって、落札者はシロということになりそうである。
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