(この記事の要約) ・Twitterで情報商材やEAを販売する場合、氏名(本名)、住所、電話番号を表示する必要がある ・NOTEやココナラで販売を行う場合には、販売者の住所及び電話番号は非開示にできるが、氏名(本名)は表示する必要がある ・これらの表示義務に違反した場合には是正命令等がなされる可能性があり、命令違反には罰則の適用がある |
■目次
第1 特定商取引に関する法律(以下「特商法」)の適用
TwitterやNOTE、ココナラなどのSNS等で情報商材やEAを販売する行為に、特商法は適用されるか。
1 「通信販売」の該当性
特商法第2条第2項では、
「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
と定義されている。
そして、特商法施行規則第2条にて、
第二条 法第二条第二項の主務省令で定める方法は、次の各号に掲げるものとする。 一 郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便 二 電話機、ファクシミリ装置その他の通信機器又は情報処理の用に供する機器を利用する方法 三 電報 四 預金又は貯金の口座に対する払込み |
と規定される。
このうち、「情報処理の用に供する機器」とはパーソナル・コンピューターや携帯電話、 スマートフォン等であり、インターネット等を通じて申込みが行われるものがこれに該当するとされる(特定消費取引に関する法律・解説(令和4年6月1日時点版))。
TwitterやNOTE、ココナラなどのSNS等での情報商材やEAの販売は、「インターネット等を通じて申込みが行われるもの」であるから、特商法上の「通信販売」に該当し、同法の規制対象となる。
ちなみに、消費者庁が運営する特定商取引法ガイドの通信販売広告QAのQ1において、
特定商取引法に定める通信販売の対象は、「商品若しくは特定権利の販売」又は有償で行う「役務の提供」です。「有料の情報配信サービス」が役務を有償で提供する契約に基づく場合は、特定商取引法の規制対象になります。 |
との回答がなされており、単に情報配信に留まる場合であっても、それが有料の場合には、特商法の規制対象となる。
2「販売業者又は役務提供事業者」の該当性
witterやNOTE、ココナラなどのSNS等での情報商材やEAの販売が、「事業」として行われない場合には、特商法の規制とはならない。この点に関して、特定商取引法ガイドは、
「販売業者又は役務提供事業者」とは、販売又は役務の提供を業として営む者を意味します。業として営むとは、営利の意思を持って、反復継続して取引を行うことをいいます。なお、営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されることとなります。 |
と記載している。
いわゆる「(事)業性」と言われる問題であり、色々な規制法で問題となりがちな論点であるが、基本的には有償で取引する場合には、単発のものであっても該当する前提で議論されることが多い。TwitterやNOTE、ココナラなどのSNS等での情報商材やEAの販売は、対公衆に行われることから、商品自体が単発であっても、かかる要件を満たすものと思われる。そのため、以下では販売者が「販売業者又は役務提供事業者」に該当することを前提にしている。
3 金商法上の問題(余談)
EAの販売については、金融商品取引の規制対象にもなり得る。かかる点に関しては、こちらの記事を参照されたい。
(弁護士が検証)海外FXに関する法律問題-コンサル、エントリー配信、EAの販売、ソーシャルトレードの違法性の問題etc-[工事中]
第2 広告の表示
1 氏名、住所及び電話番号の表示
「通信販売」に該当する場合、特商法に基づき、「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」の表示(広告)が必要となる(特商法第11条、特商法施行規則第8条第1号)。
なお、厳密には、
|
を表示(広告)しなければならないが、この記事では氏名、住所及び電話番号にスポットを当てる。
2 個人事業主でも表示義務あり
TwitterやNOTE、ココナラなどのSNS等で情報商材やEAの販売を行っている方の大半は、法人ではなく個人事業主ではないかと思われるが、個人にとって、「氏名、住所及び電話番号」を表示することが憚られることが多いのではなかろうか。
(1)氏名の表示
氏名について、通称を用いることができれば、負担はだいぶ楽になる。もっとも、特定商取引法ガイドの通信販売広告QAによれば、個人でも、「戸籍上の氏名」の表示が必要とされている。
(A16) 販売業者又は役務提供事業者の「氏名又は名称」については、個人事業者の場合は戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号を、法人にあっては登記簿上の名称を記載することを要し、通称や屋号、サイト名のみを表示することは認められません。 (A15) |
(2)住所及び電話番号
個人にとって、住所及び電話番号を表示することは、氏名を表示する以上に抵抗を示すものではないだろうか。この点に関して、特定商取引法ガイドの通信販売広告QAは、以下のとおり、回答されている。
大要、
①個人でも住所及び電話番号は表示する必要がある
②バーチャルオフィスや私書箱の表示では足りない
③但し、ちゃんとプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者が対応してくれることが確保されていれば、「住所及び電話番号」については、当該プラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者のものを表示すれば足りる(氏名については依然表示義務があり)
ということになる。
そのため、Twittterで販売する場合には自分の「住所及び電話番号」を表示する必要があるが、NOTEやココナラなどで販売する場合には、③の要件を満たす限りにおいては、NOTEやココナラの「住所及び電話番号」を表示すれば足りることになる(但し、氏名は自分の戸籍上のものを表示する義務がある。)。
(A17) 特定商取引法に基づき広告に表示することとされている住所及び電話番号は、事業を行う上で、トラブルが生じた場合や消費者から問合せがある場合の対応等に備えるためのものです。 そのため、「住所」については現に活動している住所、「電話番号」については確実に連絡が取れる番号を表示する必要がありますが、消費者からの請求によって、広告表示事項を記載した書面又は電子メール等を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合には、事業者の住所及び電話番号の表示を省略することも可能です。なお、ここでいう「遅滞なく」提供されることとは、販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることをいいます。 (A18) ・ 個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィスの住所及び電話番号が、当該個人事業者が通信販売に係る取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、当該個人事業者と当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者との間で合意がなされていること ・ 個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者は、当該個人事業者の現住所及び本人名義の電話番号を把握しており、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者と当該個人事業者との間で確実に連絡が取れる状態となっていること ただし、個人事業者、プラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実であり、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、特定商取引法上の表示義務を果たしたことにはなりません。 (A19) |
(3)例外的措置
特商法第11条ただし書は、「当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。」と規定している。
すなわち、特商法施行規則第10条第3項・第4項に従い、広告表示事項を記載した書面又は電子メール等を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合には、氏名、住所及び電話番号の表示を省略できることになる。もっとも、開示を請求された場合には、結局は開示(提供)しなければならないが・・・
この点に関してNOTE社は、こちらに開示請求書を用意しており(NOTEでの販売者の代わりに窓口を担っている)、開示請求に備えているが、何故か、開示請求者の個人情報の記載を要求している・・・
「個人情報のご提出は任意ですが、ご提出いただけない場合、開示できかねる場合がございます」と記載して、個人情報が提出されない場合には、開示しないことを匂わせているが、法令上求められていない要件で開示を拒否した場合には、販売業者の氏名表示義務違反を構成することになるのではないかと考えている。
第3 罰則
仮に氏名、住所及び電話番号の表示義務があるにもかかわらず、表示しなかった場合には、是正措置命令(特商法第14条)又は販売停止命令(特商法第15条)がなされ得る。これに従わない場合には、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金(特商法第71条第2項是正措置命令に従わなかった場合)又は三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金(特商法第70条第3項、販売停止命令に従わなかった場合)が科され得ることになる。
表示義務違反自体に罰則が科されるのではなく、行政からの命令を待って、これの違反に罰則が科されることになるから、一旦は表示を行わず、様子見している販売業者もそれなりに居そうな気がする・・・
余談であるが、ア〇ィダスからオンラインで靴を買ったが一向に届かず、ア〇ィダス社に照会しようと思ったら、ホームページ上に窓口の記載が一切なく、同社の委託先に、同社の連絡先を聞いて、連絡を取ったところ、クレームが殺到しているから、あえてホームページから表示を落としたと正直に担当者が言っていたのを思い出す(2019年くらいの話)。
当時、消費者庁に通報してみたが、いまだに表示がなされていない。Twitterを見る限り、配送遅延も改善されていないようにも見受けられる。
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