(法律)土地の転貸借(転借地権)の対抗要件具備方法

 

(この記事の要約)

1 原借地人の登記建物がある場合

転借人の建物が未登記でも、原借地人と転借人の間に有効な転貸借契約がある限り、第三者に対抗できる(判例)

但し、原借地人の対抗要件が及ぶ範囲については、要注意であり、原借地人の対抗要件が及ばないのであれば、当然転借人も対抗要件を具備できない。

2 転借人の登記建物がある場合

転借人の登記建物があれば、第三者に対抗できる(裁判例)

但し、これを否定する見解もある。

 

借地借家法第10条第1項は

借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

と規定する。

原借地人が登記建物を保有する場合

原借地人が登記されている建物を所有するときは、借地借家法第10条を根拠に原借地権の対抗要件が具備される。

この場合において、転借人は仮に自らが登記されている建物を所有していなかったとしても、「賃借人の有する賃借権が第三者対抗要件を具備しており、かつ転貸借が有効に成立している」場合には、原借地人の借地権を援用して、自己の転借権を主張し得るものと解されている(最判昭39年11月20日参照)。

*判例の事案では借地の一部について原借地人の建物があるところ、残部について転借人に貸し、転借人はその残部に未登記建物を所有していた。

従って、原借地人が登記されている建物を所有しているときはさほど問題は生じない。

なお、例えば、一人で甲乙2筆の土地を借地し、登記建物が甲地のみに存在するときは、それによる対抗力を乙地にまで及ぼすことができないと解されているため(最判昭40年6月29日)、この場合には、乙地はそもそも原借地人も対抗力を有していないのであるから、乙地を転借した転借人はその上に未登記建物を保有しているにすぎないときは、当然対抗できないことになる。

転借人が登記建物を保有する場合

では、転借人が登記建物を保有する場合はどうか?

この場合の取扱いについては、私が検索した限り、関連する判例は不見当であり、地裁レベル(東京地判昭43.2.15、東京地判昭46.10.30)では、転借人のところに建物所有権登記があれば、土地の譲受人に対して、占有権限を主張できるとの見解を採用したものがある。

この見解を前提にすれば、転借人が登記建物を保有する場合には、原借地人も転借人も対抗要件を具備していると考えることになるだろう。

(原借地人も対抗要件を具備できる理論構成が問題となり得るが、原借地人・転借人の間に有効な転貸借契約が存在することを前提に、転借人名義の登記建物を以て、「借地権者が登記されている建物を所有するとき」に準じた扱いをするという整理で良いように思う。)

なお、「転借地権者名義の建物登記による転借地権の対効力が及ぶ人的範囲は、原借地権の譲受人及び二重転借地権者に留まり、土地所有権の譲受人は範囲外である。転借地権が原借地権を基礎に存立する以上、対譲受人との関係において、転借地権は原借地権と共に消滅する。」との見解(2022年追記:リンク先の弁護士のブログが削除されてしまったようである。)も唱えられているようである。

個人的には、借地借家法自体が、「転借地権」「転借地権者」という定義を設け、転借人が転借地上に建物を所有することを予定した規定を置いている(例えば、借地借家法第12条第4項など)にもかかわらず、かかる見解は硬直的に過ぎるようにも思う(あえて地裁裁判例と異なる見解を採用する積極的理由もないように思われる。)。

 

 

 

 

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