[あらすじ]
タイトルにある”白鳥”と”コウモリ”は、殺人事件の「被害者の子供」=白=白鳥、「加害者の子供」=黒=コウモリを喩えたものである。
弁護士(以下、V弁護士)が東京で殺害され、とある人物(以下、A)が自白することが物語の起点となる。Aは既に時効が完成している30年以上前の名古屋の殺人事件(被疑者が勾留中に自殺をしたことで、ちゃんと捜査が行われず、片付けられてしまっていた)の犯人も自分であると自白する。
Aの自白内容に矛盾はなく、警察・検察官は当該内容に沿って捜査を進める。しかし、当該内容を裏付ける物証・自白以外の供述証拠がでてこない。
Aの自白内容通りに事件を処理したい検察官、事実関係を争わず、量刑だけを論点としようとするAの弁護人・・・Aも起訴内容を一切争わず、通常ならば、そのまま事件が解決とされるところである。
これに異議を述べたのが、Aの息子と、V弁護士の娘だった。Aの息子は、Aの自白内容におけるAの父親像が、V弁護士の娘はV弁護士の父親像に違和感を持ち、自白内容をそのまま受け入れらない。それぞれが独自に調査を行っているところ、殺害が行われた現場にて偶然二人は出会った。加害者の息子と被害者の娘という本来ならば、交わらない立場の二人だが、お互いの胸中を口にするとシンパシーを感じ、二人で共同して捜査をする流れに。
AとV弁護士の過去をそれぞれ遡っていくことにより、明らかとなっていく事件の本来の姿。
最終的には、V弁護士が30年以上前の名古屋の殺人事件の本当の犯人で、その犯行を目撃したものの、黙っていたA。当該殺人事件で獄中で自殺してしまった第三者(完全に冤罪だった。以下、Y)の孫(14歳の少年)が、V弁護士のせいで犯罪者の親族として辛い人生を歩んできたことの復讐として、V弁護士を殺したことが明らかに(ただ、その後の少年の供述で、単に殺人をしてみたかっただけであることが判明)。Aは自分がV弁護士の犯行を見逃したことによって、辛い人生を歩んできたYの親族に対する贖罪として、虚偽の自白をしたのであった。
”白鳥”と”コウモリ”が物語の前後で入れ替わるところが興味深い。
なお、タイトルである”白鳥とコウモリ”は、加害者の息子と被害者の娘が共同して捜査しているのを見た警察官が発した「まるで白鳥とコウモリが一緒に飛ぼうっていう話だ」という言葉から引用されたものである(まぁ、実際はタイトルが先に決まって、捜査官の言葉を無理くり作ったのではないかという気がするが・・・)。
なお、最後は、Aの息子とV弁護士の娘が恋愛関係に発展するような描写で終わるが、この物語に恋愛的な描写が必要があったのか、個人的には蛇足感がある。
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