海外FX業者を選ぶ際に、信用性・信頼性の一つのメルクマールとして、どこかしらの国の金融商品取引業者としてのライセンス登録を保有しているか否かを用いるサイト・人は多いであろう。
このライセンス登録が、海外FX業者選択の一つの要素となること自体は異論がない。
ただ、ライセンス登録が絶対的なメルクマークとなるのかといえば、疑問符が付く。
そこで、このライセンス登録をどう考えるべきか、検討してみた。
私が出した結論(この記事で言いたいことのまとめ)
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第0 そもそも日本だとどうなっているのか?
金融商品取引法は非常に条文が分かりづらく、理解しづらい法律だが、FX取引とバイナリーオプション取引について整理すると大要以下のとおりとなる(厳密に整理すると分かりづらくなるので、以下では簡単に整理している。よくよく考えると若干不正確なところもあるが、その点はご容赦いただきたい。)。
FX取引やバイナリーオプション取引は、金融商品商品取引法上の「デリバティブ取引」(同法2条8項20号)に該当し、日本国内でかかる取引及びその勧誘を行うためには、第一種金融商品取引業(同法28条)の登録を受けなければならない。
第一種金融商品取引業の登録には、最低資本金要件があったり、純資産額要件があったり、自己資本規制・主要株主規制が課されていたりして、とにかくその登録要件は厳格である。
また、日本でFX取引を提供する場合、レバレッジ規制があったり、信託保全義務が課されていたりする。
そのため、日本の第一種金融商品取引業の登録がなされていれば、一応その業者は信用できそうである。
もっとも、有名どころでいえば、リーマンブラザーズ証券会社は、第一種金融商品取引業の登録を受けていたにもかかわらず、飛んでしまったわけだから、この登録を受けていれば、必ず安心というわけではない。現に金融庁も、
■外国為替証拠金取引は、金融商品取引法に基づく登録を受けた業者でなければ行うことができません。投資者の皆様におかれては、登録を受けていない者からの勧誘に十分ご注意ください。
■登録を受けた業者と取引を行う場合であっても、その業者の信用力を慎重に判断し、取引内容をよく理解することが重要です。 |
と言っているのである。
第1 各国のライセンス
さて、海外FX業者に目を向けてみる。
一般的には、以下の各国の金融庁の登録のハードルは厳格と言われている。
①イギリス(FCA)
②キプロス(CySec)
③ニュージーランド(FSP)
そのため、これらの3つのうち、どれかのライセンス登録を行っている海外FX業者は、出金拒否や詐欺被害にあるリスクは小さいとして、口座開設を推奨しているサイトが多い。
なお、日本人が一番利用している海外FX業者といわれるXM Trading(厳密には、これは、Trading Point (Seychelles) Limitedが提供しているサービス名)はセーシェルの金融庁(FSA)により認可されている。セーシェルの金融庁の登録は緩いと言われているが、XM Trading(Trading Point (Seychelles) Limited)と同じグループであるXM(厳密には、これはTrading Point Holdings Ltdが提供しているサービス名)は、キプロスの金融庁(CySec)のライセンス登録を保有している(分かりづらいけれども、XMとXM Tradingは異なるサービス名なのである。)。
そして、キプロスの金融庁(CySec)のライセンス登録は上記のとおり厳格な要件が課されていることから、XM及びXM Tradingはグループ総体として、信用性が高いのであろう(なお、XM及びXM Tradingには他にもグループ会社が存在しており、それぞれ違う国のライセンスを保有しているようである。)。ちなみに、FBS、HOTFOREX、iFOREX及びXLNTradeなどもキプロスの金融庁(CySec)にライセンス登録を行っている(蛇足となるが、個人的には、そのサービス内容も踏まえ、iFOREX及びXLNTradeは特にオススメである。)。
但し、第0で記載したとおり、厳しい国のライセンスを登録しているからと言って安心してはならない。
海外FX業者の紹介サイトで、優良な業者として紹介されていたAXIORY(アキシオリー)は、自身は規制の緩いと言われているベリーズの国際委員会(IFSC)のライセンス登録しか有していないものの、その親会社(R Capital Solutions Ltd)がキプロスの金融庁(CySec)のライセンス登録を有しており、信用性が高いと位置づけられていた(XMと同じような評価がなされていた)。
もっとも、2018年12月にメインバンクであったSparkasse(ドイツの銀行)から銀行取引停止処分を受け、2019年2月11日にbitwalletから取引を打ち切る旨の通告がなされている(bitwalletのプレス参照)。
私がbitwalletから受信したメール(以下の写真参照)には、
同社は、2018年12月、これまでのメインバンクであったSparkasseから銀行取引停止処分を受けたことを確認しており、2019年2月現在、お客様への返金手段は非常に限られていると見受けられます。
当社(bitwallet)をご利用になりAxiory社へ入金したお客様は、お客自身の資産保全のため、早急にお引き出しいただく事を強くおすすめいたします。
とされており、出金拒否のリスクが指摘されている(なお、2019年2月12日現在、実際に出金拒否があったという話は聞いていない)。
このように、親会社あるいは関連会社が厳格な国の金融ライセンスを持っていたとしても一概には信頼できない。
(2019年2月13日追記)この件に関して、アキシオリーサイドもプレスを発表している。詳しくはこちらを御覧いただきたいが、要約すると、
①リヒテンシュタイン公国のユニオン銀行とドバイにあるDoha銀行と提携開始済。
②Doha銀行が提供する自動ID認証システムJumioを導入。導入後、ユニオン銀行にて信託保全を行う。
③Bitwallet社とは2019年2月28日をもって業務提携を終了。
④Bitwallet社によるニュースレター記載の 「2018年12月、これまでのメインバンクであったSparkasseから銀行取引停止処分を受けたことを確認しており、2019年2月現在、お客様への返金手段は非常に限られていると見受けられます。」は事実と異なる。
⑤アキシオリーは、Sparkasse銀行から銀行取引停止処分を受けていない。Sparkasse銀行はユーロ圏外の金融サービスを終了したため(この点については、当該銀行も公表している)、アキシオリーと円滑に業務提携を解除した。
ということである。ちなみにキャッシュバックサイトのtaritaliはAXIORY寄りの見解を表明している(こちらをご参照)。
Bitwalletの完全ないいがかりだったら、可哀想なところではあるが、いずれにしても、このような騒動を起こされること自体に、運営体制の問題点が有り得るような気もしてならない。利用者の立場からすると、あえて火中の栗を拾いに行く必要はない(追記以上)。
ちなみに、日本と同じように、信託保全義務を課している国はあるようだが、日本人にとって、これが有用な自己防衛手段なのか、私は疑問を感じる。
仮に信託保全をしていた海外FX業者が倒産した場合、信託財産から回収できるのはあくまで実現済みの残高が上限になるであろうし(含み益は含まず、実現済みの残高が全てが返ってくるとは限らない)、それは良いとしても、その信託保全された財産からの回収手続については、当該信託保全国の法制に従ってなされることになるだろうが、(おそらく英語で行わなければならない)この手続を日本人が理解できるのだろうかと疑問を感じる。オンラインで完結するのかも分からない(海外郵送が必要となる事態もあるのではないだろうか)。
いずれにしても、厳格な国のライセンス登録を有している、あるいは、信託保全がなされているということだけで安心しない方が良さそうだ。
第2 マイナーライセンスはオフショア?
さて、一般論として、どこかしらの国のライセンス登録を持っていた方が信用されるのであれば、緩い国のライセンス登録をとっておこうという発想になる。実はかかる発想とは別の理由で、緩い国のライセンス登録をしている海外FX業者も存在する。
いわゆる「オフショアブローカー」である。
オフショアブロカーは、実際にライセンス登録している国とは別の国に本社を置いて運営している。
例えば、モーリシャスやベリーズのようなあまり日本人に馴染みのない国に法人を作って金融ライセンスを取得して、ヨーロッパ本土に本社を置いている。
このようなオフショア営業のメリットとして、先のライセンス登録が緩いということに加えて、営業国の国外の収入に関して税金面で優遇されるという点がある。
すなわち、金融ライセンス登録の条件が緩い国は「国内で営業しないことを条件に、国の外から得た利益に税金がとられない」というタックスヘブンの形をとっているところが多い。
このタックスヘブンのメリットを享受するため、条件が緩い国のライセンス登録を保有しながら、当該国以外の国で営業をするのである(ヨーロッパの税務については詳しくないのだが、おそらく本社がある国でも課税されないことは前提になっているのだろう。本社がある国で課税されたら何も意味ないし)。
若干トートロジーチックになるが、上記のとおり、ライセンス登録について、「国内で営業しないこと」が条件となっている故、自国民を守る必要がなく、金融ライセンス登録の条件が緩くなり、当然、当該国の金融庁の監視も緩くなる。
なので、海外FX業者が、タックスヘブン目的で、ライセンス登録を取得している場合には、ライセンス登録を保有しているが、基本的には当該海外FX業者の信用性の補完にはならないのではないかと思われる。
第3 あえて、マイナーなライセンスの登録しているところもある?
厳格な規制を逃れるため、あえてマイナーなライセンスを登録している優良な海外FX業者もあるとの指摘がある。大要以下のとおりの説明がなされていたわけだが・・・
- 大前提として、海外FX業者が一番恐れているのが、日本市場からの撤退である。
- かつて、日本の金融庁は、オーストラリアの金融サービスプロバイダーが日本居住者と取引を行う事を禁止するよう、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)に依頼。
- オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は日本の金融庁の依頼を受け、オーストラリアの金融サービスプロバイダーに勧告を行い、オーストラリアライセンス(ASICS)を取得している有名な海外FXブローカー(AxiTrader,Pepperstone,Thinkforexなど)が一斉に日本市場から撤退を決めた。
- マイナーな国のライセンスであれば、日本の金融庁とのリレーションが弱く、協調を求められない、すなわち、日本からの撤退を勧告されないで済む。
- また、税金面で優遇されていて余裕がある分、トレーダー思いのサービスを展開している。
この説明自体本当か?という感じがする。そんなに市場規模の大きくない日本市場から撤退を避けることを理由に、マイナーな国のライセンス登録をするという発想がどうも論理的ではないように思う。例えば、世界展開するFBSなんかは、「日本なんか市場が小さいから、日本人用の広告宣伝費の予算がない」と言っていた(これ、実話で、FBSの問い合わせ窓口の人に私が言われた・・・)。
何より、上記の説明で、優良業者として紹介されていたのは、先に載せたAXIORY(アキシオリー)なのである・・・
どんな理由があるにしても、マイナーな国のライセンス登録があるということは何らの信用性補完にならないことは胸に留めておきたい(ここまでは言い過ぎか?)。
第4 セーシェルライセンス?
さて、ライセンス登録とは少し離れるが、セーシェルの場合、会社登録すると、登記上、「Seychelles Licence No.●●」と表記されるようである。これは日本でいう会社法人等番号であり、金融ライセンスを持っていることを意味するわけではない。
にもかかわらず、海外FX業者の中には、さも金融ライセンスを持っているかのように、「Seychelles Licence No.●●」とHP上に表記しているところもあるようなので、注意したい。
第5 結論
上記のとおり、とりとめのない話をしてきたが、私の出した結論としては、冒頭述べたとおり、
- 厳格な条件を課している国の金融ライセンスを保有していることは、海外FX業者を選ぶ際の一要素にはなり得る。
- 但し、それで絶対に信用性・信頼性が認められるというわけではなく、信じすぎるのは危険。
- マイナーな国の金融ライセンスを保有していることは、ほとんど評価に値しない。
- 従って、海外FX業者を利用する際は、いくつかの業者に分けて、資金を分散しておくことが良し。
ちなみに以下の記事には、各業者の比較とあわせて、ライセンス登録の所在も表でまとめているので、適宜参照されたい。
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