(弁護士が検証)パパ活は違法・犯罪?売春との違いは?法的視点から整理してみた。~相談事例も載せました~

最近、リベンジポルノに困っていた女性が、警察に相談したら、助けてもらえるどころか、売春防止法で逮捕されたというニュースが流れていた。

いわゆる売春・援助交際がパパ活という名前に呼び方が変わり、いかにも気軽に行えるようなイメージを持たれてしまっているが、よくよく考えると、パパ活を行う女性側にも、男性側(パパ)にも違法性、刑罰の問題がつきまとう。
「パパ活 違法」でググってみると、違法ではない、刑罰はない、という説明がなされているサイトが濫立しているように見受けられる(中には弁護士が書いたものも・・・)が、それは多分実態を正確に把握しておらず、パパ活の一側面だけしか、評価していないものだと思う。

ということで、パパ活の法的問題を整理してみた。

第1 そもそもパパ活とは?

私が調べた限り、パパ活の定義は一義的ではない。この言葉が誕生した初期には、売春・援助交際とは区別され、女性が、年上の男性と食事、買い物、カラオケなどに一緒に行き(体の関係は無し)、それに対して対価をもらうという内容だったものと思われる。

もっとも、最近では、体の関係も、パパ活の中に含まれていることがあり(体の関係を提供するかしないかは、パパ活をする女性のポリシー次第)、広い意味でパパ活といった場合、売春(体の関係だけ)より広い意味を持ち、ほぼ援助交際と同義になるのだと思う。

そうだとすると、パパ活の法的問題は、援助交際の法的問題と同じ整理になることになるが、この記事では、パパ活を、年上の男性と食事、買い物、カラオケなどに一緒に行き、あるいは体の関係を持ち、それに対して対価をもらう行為と定義した上で、その法的問題を再度整理したいと思う。

第2 女性側の違法性、刑罰の問題

1.売春防止法上の問題

まず、パパ活との関係で、一番最初に思い浮かぶ法律は、売春防止法である。

売春防止法は、「売春」を対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること(同法2条)と定義し、何人も、売春をし、又はその相手方となってはならないとする(同法3条)。
したがって、食事だけのパパ活ならば、「売春」には該当しないが、体の関係がある場合には、「売春」に該当することになる。
そして、売春は売春防止法3条に反して違法ということになる。

もっとも、売春防止法3条違反には、罰則規定がない。
このことを以て、パパ活は違法であるけれども、刑罰はない、あるいは犯罪ではないと言われることがある。
これはパパ活の一側面しか見ていない評価だと思う。

売春防止法は、売春をする目的で、「公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。」を禁止しており、その違反には、「六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。」としている(同法5条1項1号)。
要約すると、インターネット等で売春を勧誘すると、刑罰に処せられるということである。

パパ活は、Twitter、SNS、出会い系サイトなどで、募集をかけることが通常である。
Twitter、SNS、出会い系サイトでの募集は、当然「公衆の目にふれるような方法」に該当する。
そのため、体の関係の提供を意図したパパの募集行為は、売春防止法5条1項1号に反し、刑罰の適用がある。

冒頭の女性が売春防止法で逮捕されたニュースは、この規定の違反であったものと思われる。

なお、この規制があるから、体の関係をストレートな表現を用いず、「大人の関係」や、「食事以上の関係」とぼやかしている女性も多いようであるが、このようなぼやかした表現で適用を逃れられるのかは疑問が残る(本当にパパ活が上手い人は「条件は個別メッセージ」と広告し、「公衆の目にふれるような方法」に該当しないように逃げているようである。)。

2.民法上の問題

(1)ドタキャンする行為

パパ活において、会う約束をしたものの、遠目から見て、相手の容姿が気に入らなかったという理由でドタキャンするということがしばし起きるらしい(気持ちは分からなくはない・・・)。

このドタキャンは刑事罰に該当する行為ではないが、民法上の不法行為(同法709条)には該当し得る。
もっとも、ドタキャンされた側に発生する損害は、待ち合わせ場所までの交通費や、約束を取り付けるまでに要した出会い系サイトの利用料などに留まるであろう。
また、そもそも、パパ活はお互いの素性を明かさないことを前提に会うのが通常であろうから、キャンセルした女性に請求しようとしても、できないことが多いものと思われる。

したがって、ドタキャンをする行為は、民法上、違法と評価され得るものの、実際に損害賠償義務を履行しなければならない事態は想定し難い。

(2)不貞行為

パパが妻帯者である場合において、体の関係をもった場合、いわゆる不倫に該当し、民法上の不法行為となり、慰謝料の支払義務をパパの妻に負担することになり得る。
ただ、パパが妻帯者であることについて、知らず、かつ、知らなかったことに過失がないのであれば、不法行為が成立しない可能性はある

なお、この場合の慰謝料がいくらかはケースによって異なるが、

慰謝料の相場(参考)
別居にも、離婚にも至らなかった場合 50万円~100万円
パパ活が原因で別居に至った場合 100万円~200万円
パパ活が原因で離婚に至った場合 200万円~300万円

 

を一応の目安としてあげておく。

ちなみに、私も知らなかったのだが、妻帯者と食事に行っただけでも、妻からパパ活をした女性に慰謝料を認めた裁判例があるらしい。慰謝料の金額は10万円程度だったようだが・・・要は、可能な限りは妻帯者は避けるべきということだろう(まぁ、当たり前のことだが)。

第3 パパ側の違法性、刑罰の問題

1.売春防止法上の問題

パパ側が、Twitter、SNS、出会い系サイトで体の関係を前提としたパパ活の相手を募集した場合には、女性側と同様、売春防止法5条1項1号違反に該当し、「六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に」処される可能性がある

なお、女性側の募集に応募し、買春をするだけであれば、違法ではあるものの、罰則の適用はない。

2.刑法上の問題

(1)監禁罪、強要罪、強姦罪

パパ活で、パパが女性をドライブデートに誘うことがままあるらしい。

文字通り、ドライブデートならば、問題は少ないが、車に乗せ、高速道路に乗り、自由に降りられなくなった状態で、無理矢理ホテルに連れていかれるといったケースもしばしばあるようである。

この場合、①ドライブデートを装い、車を載せる行為が、女性を車という一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にしていることから、監禁罪(刑法220条)が、②むりやり卑猥な行為を行う行為につき、その態様次第で、強要罪(刑法223条)又は強制わいせつ罪もしくは強制性交罪(刑法176条ないし178条)が成立する可能性がある。

(2)詐欺罪

食事、買い物、カラオケあるいは体の関係を持ち終わった後、女性にお金を支払わないことは詐欺罪(刑法246条)に該当するか。

パパ活の内容が食事、買い物、カラオケなど、体の関係を伴い場合には、その対価の授受は、前述のとおり、それは「売春」には該当しないことから、そのようなパパ活は違法ではなく、違法ではないパパ活の対価を意図的に支払わないという行為は詐欺罪(刑法246条2項)に該当するものと思われる。

これに対して、体の関係を伴う場合、そのパパ活は、売春防止法上違法であることから、その対価を支払われない行為が詐欺罪に該当するとなると、売春防止法で「売春」を防ごうとした趣旨を没却する(売春防止法は対価ありの性交を禁止しているが、対価を払わないと詐欺罪が成立するとすれば、対価の支払いを促進してしまう)という側面がある。
難しい問題であるが、詐欺罪の成立を認めた裁判例と否定した裁判例の両方があり(肯定:名古屋高裁昭和30年12月13日判決など、否定:札幌高裁昭和27年11月20日など)、学説においても、見解が分かれている。裁判になった場合には、その裁判で判決を行う裁判官の価値観次第で判決の結果が異なってくるのではなかろうか。

3.児童関連法規上の問題

パパ活の相手が18歳未満の場合において、体の関係を持った場合、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律が禁止する児童売春にも該当する。児童売春には、「五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」が処される(同法4条)。重罰である。 

なお、女性が18歳未満の場合には、そもそも当該女性は「青少年」に該当するので、無償で体の関係を持つ場合においても(無償のパパ活があるか疑問ではあるが)、東京都青少年の健全な育成に関する条例(東京の場合)違反となり、「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金」が処されることになる(同条例18条の6、第24条の3)。

4.民法上の問題

(1)ドタキャンする行為

女性側と同様、ドタキャンは刑事罰に該当する行為ではないが、民法上の不法行為(同法709条)には該当し得る。

(2)お金を払わない行為

先のとおり、刑法上、詐欺罪を構成する可能性がある。

民法上、どのように評価されるかについてだが、体の関係のないパパ活において対価を支払わない行為は、契約違反となり、債務不履行責任を負うことになる。
これに対して、体の関係を伴うパパ活は、「売春」に該当し、違法であることから、民法上も公序良俗(同法90条)に反し、契約自体が無効となり、対価を支払う義務を負わないことになるものと思われる。

5.相談事例

この記事を公開してから、幸か不幸か問い合わせ窓口やツイッターのDMで相談を受けることが増えた。簡単にだが、これまであった相談事例を載せておく。ドタキャンを食らったという連絡に関しては、残念でしたね、としか言えないので、犯罪性があるものに限定して紹介している。

(1)財布が盗られた

この相談は何回も受けた。パターンとしては、①お食事中にバッグを置いたまま席を立ち、トイレに行っている最中に盗られた(そして、相手はもう席にはいなかった)、②ホテルでシャワーを浴びている最中に盗られた、というものが多い。
いずれも窃盗で立派な犯罪行為。警察及び利用したパパ活サイトの運営者に相談することをオススメする。なお、この問題の難しいところは、パパ活という経緯から、警察への相談が躊躇われるところ。特に大人の関係を持った場合、その募集の仕方次第で自分が逮捕される可能性もあるのは前述のとおり。自衛の意味で、最低でも、トイレ・シャワーに行く場合でも財布等(高級品・身分証明書)は離さず、持ち歩いた方が良い。

(2)食事代を支払わせられた

上記と同様、トイレのために席を立った際に、逃げられ、店に残った自分に食事代を支払われせられるパターンもよく聞く。民法上の不法行為には該当し、損害賠償請求は理論的には可能であるが、逃げた者に犯罪が成立するかどうかは怪しい。詐欺罪の該当性を検討する余地があるかもしれないが、どの行為が詐欺行為だったか、また、どの時点で逃げる意図が生じたか、を厳密に考えると、詐欺罪の成立を立証することは難しいように思う。自衛策としては、信頼関係が構築するまでは高い店に行かない、あるいは先払いの店(ファーストフード店になっちゃうかもだけど)に行くなどの対応を採るべきだろう。運営には相談しても良いと思うが、お金は返ってこない可能性が高いことは覚悟して欲しい。

(3)お金を払ってくれなかった

食事あるいは、事が済んだ後にお金を支払ってくれなかったという話は頻繁に聞く。パターンとしては、①事後お金を渡すと言われていたが、シャワーの最中に逃げられるパターン、②後で振り込むので、口座情報を教えて欲しいと言われ、結局支払われないパターン、③②の精巧なパターンとしては目の前で送金手続を実演するも、事後的に送金取消を行い、支払われないパターン、④月末払いの月契約をしたところ、月の途中で音信不通になるパターンなど。前述のとおり、体の関係を持つ対価として支払う約束をしたお金を払わなかった行為が詐欺罪を構成するかについては、見解が分かれている。自衛の意味では、お金は先払いでお願いしていることを会う前の段階で伝えておき、実際に先にもらっておくことではなかろうか。

(4)お金を奪い返された

お金はもらっていたが、事が済んだ後、シャワーを浴びていたら、または化粧をしていたら、お金を取り返されていたということも聞く。これは窃盗罪が成立するが、警察に届けにくいのは前述のとおり。お金は肌身離さずいるのが大切なのだろう。

(5)顔合わせ詐欺

この言葉は2つの意味で使われている気がする。一つ目の意味としては、①事前に見せてもらった顔写真と全く別人が来ること。これはしょうがない。最近のスマホのカメラは盛れるのが通常だし、誰しもよく見られたいので、奇跡の一枚を投入するのは理解できる。正直、犯罪性はないだろう。個人的には諦めるべきだと思う。もう一つは、②顔合わせ(お茶・お食事)で5,000円~10,000円もらった後、即ブロックされることを意味する。もう少し補足すると、パパ活はやはり基本的には食事だけでは成り立たず、体の関係を持てない子はそもそもオファーが少ないらしい。一方で、いきなり会って、そのままホテル・・・というのも抵抗があるらしく、顔合わせというステップを一回踏むのが一般的なようだ。その顔合わせにも5,000円~10,000円程度、対価が支払われるため、体の関係を持つつもりがないのに、気を持たせつつ、顔合わせの対価をもらったら、(二回目に会う約束をするものの)そのままブロックするということが横行しているらしい。これは男が被害者のパターンであるが、理論的には女の子に詐欺罪が成立する。ただ、女の子の詐欺の故意を立証するのは少し難しいような気がしている。パパ活をしている男性は基本モテない、ストレートに言えば、キモヲタが多いイメージであるが、女の子側が生理的に受け付けないものの、優しさ故、それをストレートに伝えることができないで、顔合わせが終わってからブロックするというパターンも十分想定されるからである。

(6)掲示板に晒されてしまった

これが一番、重いかもしれない。顔写真と共に実名がインターネットに晒されると取り返しがつかないことになる。なので、余程信頼できない限りは本名を教えるべきではない。気を付けたいのは、①LINEに本名を使っており、本名がバレる場合、②後でお金を振り込むからと言われて、口座情報を教えてしまう場合、③シャワーを浴びている際に身分証やクレジットカードを見られる場合である。インターネットに晒される時点で何等かの恨むを買っているのであり、酷いことが書かれる。しかも顔写真付きの実名で。下手すれば、人生が終わってしまい兼ねない事案であり、実際に、交際相手にパパ活がバレて振られた、家族・友人にバレたなどのケースが存在する。
早急に①掲示板運営者に削除依頼を出し、かつ、②Googleにも検索にヒットしないように依頼すべきだろう。①について注意したいのは、パパ活をしている者を晒す専用の掲示板などに書かれてしまった場合、掲示板運営者が対応してくれない可能性が高い(そして、サーバーが海外にあり、運営者の特定が困難なケースも多い)。それどころか、その削除依頼すら晒されるリスクがある。削除依頼を出すに当たっては、削除依頼も晒されないか確認すること、(まともなサイトでも身分証明書を求められることがあるが)身分証明書のうち住所や免許証番号など不必要な情報は隠すこと、に注意したい。検索エンジンにひっかからないだけでも十分効果があるし、Googleさんは割と真摯に対応してくれるので、少なくともGoogleには早急に削除依頼を出すべきだろう。参考までにGoogleの削除依頼フォームのリンクをこちらに貼っておく。

上記以外にも、相談したい事例・疑問点があれば、本記事へのコメントか問い合わせ窓口までご連絡ください。
(なお、私はインターネットの法律関係の専門家ではないため、案件としては受任することはありませんので、その点はご了承ください。)

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  • 今流行りのパパ活ってなに??パパ活の実態を紹介! へ返信する コメントをキャンセル

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